blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ もう君をかばえない

 妻と坊主に「このような悲しみを味わうために、俺はサッカーを見ているのだろうな」とつぶやいたら、坊主に「もし入替戦に出ていたら『入替戦のような興奮を味わうために俺はサッカーを見ている』と言うくせに」と指摘された。

 過去、幾多の悲しみを味わってきた。けれども、今日のベガルタの入替戦進出失敗のように、もやもやとした爽快感の無い悲しさを味わった事は、あまり経験がない。理由は明白で、ベガルタ都並監督の采配振りが余りに理に叶っていなかったからだ。
 押し気味に試合を進め、決定機も複数回掴みながら得点できず0−0で前半終了。後半開始早々の決定機も生かせず。この日アビスパのGK水谷は、開始早々のシュウェンクのFKを見事な読みで止めてからは絶好調で、少し嫌な雰囲気が漂う。そして、逆襲から許したFKをアビスパ古賀誠に見事に決められて先制される。守りを固めるアビスパに対し、必死の猛攻をしかける。そして65分、30mほどの距離のFKから、村上が強烈に決め同点に追いつく。ここまでは、内容も良く、的確な試合運びだった。
 ところが同点に追いついたあたりで、前半から飛ばしていたためだろうか、ベガルタMF陣の疲労が顕著になり、あまり攻め込めなくなる。この時点で西京極でサンガと試合しているヴァンフォーレは1−1。確かに両方の試合がこのまま終わればベガルタの入替戦出場となる。しかし、もしヴァンフォーレがリードすれば状況は一変する。とすれば、ベガルタは攻撃を仕掛けリードを狙うべきだろう。さらに言えば、さらに失点を重ねもし負けたとしても、ヴァンフォーレが同点のままならば、勝点で双方は並ぶが得失点差でベガルタは優位にある。つまり、ベガルタはリスクを負いやすい状態にあった。逆に考えれば、ヴァンフォーレは同点のままでは何が起こってもどうしようもないから、相当な無理攻めを仕掛けるのが当然の状況。しかも、アビスパは早め早めの交代をしてきているので、敵の様子を見る必要もない。あれやこれや確率を考えても、無理攻めを仕掛ける時間帯では無いが、攻めを重視してよい状態だった。
 しかし、都並氏は動かない。ベンチには変化あるパスが持ち味の財前もいる。もし、財前の守備力に不安があり中盤のバランスを崩したくないならば、(そもそも控えにいる理由が不明だが)展開力も運動量もボール奪取も期待できる菅井もいる。カードは3枚残っている。ああ、それなのに。
 このような合理的に説明できない采配を継続されたので、非常に悪い予感、落ち着かない予感がしていた。ベガルタの各選手はそれでもよく動き、ほとんどピンチを招かない。しかし、攻めも有効に機能しない。同点のまま時計は進む。
 ここで恐ろしい一報が届く。ヴァンフォーレがとうとう逆転したと言う。ベガルタはこのままではダメになった。残り時間は10分を切っている。都並氏は慌てて、財前、富田を投入し、再び攻撃に出る。幾度か好機を掴むものの、ベガルタに水谷が立ち塞がる。さらに、大柴に代えて熊谷を投入し、シルビーニョを前に出すが、熊谷に往年の展開力が無いのは幾度も確認されていた事。それにしても、第3クール半ばに起用されて以降、完全にチームの中核となっていた菅井を全く起用しないとは...
 しかし、それでも選手たちは素晴らしい戦いを見せてくれた。幾度か無理攻めから好機を掴んだのだが...

 1−1のまま、試合終了。藁をも掴む想いで、チャンネルを西京極に切替える。ロスタイム、ヴァンフォーレゴール前での直接FK。サンガ鈴木悟の見事なシュートがポストを叩いた。
 1年間の冒険が終わった。
 
 過去、いくらでも監督の采配ミスで涙した試合を体験してきた。采配ミスには、監督の判断のミス、考え過ぎて策を弄し過ぎるミス、過緊張で動けずに采配の機を逸するミス、逆に興奮し過ぎて動き過ぎてバランスを崩してしまうミスなど、様々なミスがある。それらもまたサッカーである。
 しかし、今日体験させられたミスは、勝点勘定において、およその合理性すら見られないミス。つまり、判断ミスとか、精神的なものによるミスではない。理解力不足によるミスとでも言おうか。選手が素晴らしいプレイを見せてくれただけに、あまりに、あまりに悔しい。
 44試合最後の最後まで可能性を見せてくれたベガルタ。あと2試合は夢と消えたが、最後の最後まで愉しませてくれた事に不満はない。そして、30年以上に渡るサッカー体験において、初めての種類の失望感すら味わえたのだから。

 サッカーは奥深い。
 
 西野監督、俺の負けだよ、おめでとう。
 宮本の涙は美しかったよ。でも、それにしても、サッカーの神よ。あなたは何としても森島と言う稀代の英雄に歓喜を提供したくないのだろうか。

投稿時間 2005年12月03日
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