blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ 恐れ入りましたアルゼンチン(1)

 いやあ、恐れ入りました。久し振りに本当に酷い目にあった。「勝つんだ」なぞと言った事自体が恥ずかしい。自軍の情けなさは別途講釈本編で愚痴を垂れ流す事にしたい。それにしても、ジーコ氏の擁護論を、アルゼンチン戦の前に書き上げる事ができて、本当によかった。あのタイミングで書いておかないて、永久に氏の過去を讃える機会を失うところであった。
 
 と言う事で日記では敵軍の素晴らしさについて語りたい。
 サネッティがハーフウェイライン近傍で加速を開始した瞬間、稲本は少なくともサネッティにまとわりつく事が可能な場所で正対していた。しかし、一気にトップギアに加速したサネッティに、昨年のワールドカップ時点では肉体接触力では欧州勢と対等以上に戦った稲本はあえなく転倒する(まあリハビリ中だし、稲本批判は、これ以上する気はない)。
 カバーすべき位置にいた小笠原も、この屈強なはずの僚友がかくも容易に振り切られるとは予想していなかったのだろうか。一瞬で置いていかれる。この直前、ソラーリが(日本から見て)右サイドの突破を狙った場面で、小笠原は抜かれながらも冷静にソラーリのシャツを掴む事で突破を阻止した(ペナルティエリア内ではあったが、ソラーリがあの程度のシャツの引っ張りで転倒する訳がないから、実に適切な守備であった)。しかし、この場面はさすがの小笠原も、シャツをつかむ余裕すらなかった。
 そして、サビオラを使ったワンツー。サビオラのリターンがまたコースといい急速といい完璧だったのだが、それを受けて右足を一閃した一発のコースと強さ。二アサイドの上隅。シュートのセオリーにファーサイドの下隅を狙うと言うのがあるが、逆にニアの上のあのコースに蹴る事ができるならば、セオリー以前にGKはノーチャンス。ハンドボールでは、手でシュートを打つだけに、サッカー以上にシュートのニアとファーの議論が多いと言うが、サネッティを見ていると、サッカーでも同様の議論が必要かもしれない。
 技巧、アイデア、強さ、速さ、全てにバランスが取れた、まさに世界最高峰と呼ぶべきゴールだった。昔、鹿島にいたジョルジーニョ(私の評価としては、世界歴代ベスト11の右サイドバックをフォクツと争う選手だ)をへのインタビュー記事で、「あなたの後継者は」と言う質問に「サネッティ」と答えていたのを思い出した。アルゼンチンは最近もっぱら3DFで、サネッティはサイドハーフでプレイしているが、後方のサイド寄り(主に右サイドだが今日は序盤左でも問題なくプレイしていた)から前線に進出し、かつ自分が担当するサイドをしっかり守ると言う意味では、現在世界最高峰のプレイヤであろう。ロベカルよりも後方の備えは万全で、カフーよりその前進は効果的だ。ジョルジから見れば、カフーでは役不足と言う事だったのだろうか。山田や市川や根本や田中隼は、このサネッティのゴールを見て、何を感じ取ってくれただろうか。
 
 実はこの惨禍を20年来のアルゼンチンフリークの女友達と観戦していた。彼女はこのゴールを見るや、感激のあまりボロボロと泣き出してしまった。当方はあまりの不甲斐なさに泣きたい気持ちだったのだが。

投稿時間 2003年06月08日
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