blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ 「組織」の勝利ではなく、もっと崇高な勝利なのだ

 「ジーコのひみつ」探求者としては、格好のアンチテーゼに魅せられた訳で、ますます悩むわけです。

 ともあれ、本当に素晴らしい試合だった。これほど見事な試合を見せてくれたのだから、ここは言葉を選びたい。ここは単に「組織的なよいサッカー」と言う安易な言葉の選択をしたくはないのだ。

 この日の女子代表は、相互理解と個人能力それぞれ高さで完全にスウェーデンを上回った。

 確かに守備の組織力は見事だった。俊足、頑健のFWがウラをつこうとする度に、磯崎、下小鶴のCBのいずれかが必ずカバーに入る。その前で実に知的な位置取りをを見せる我らが誇る宮本、酒井のドイスボランチ、さらに浅いラインのウラを的確に押さえた山郷、ここまでの5人のの連動は、まさに「よく組織されている」と言う表現が適切だった。
 しかし、他のフィールドプレイヤ6名の動きは「組織」と言う日本語が妥当とは思えない。全員が守備に対して忠実で献身的だったのは確かだが、プレスを集中する高さや、敵を追い込む位置は、都度都度修正されていた。取れるときは敵ペナルティエリア近傍でも敵を囲んでいたし、取れないと判断した時は自陣での囲い込みに変更していた。「組織的」とも言ってよいが、決まり事に縛られていたようにはとても見えず、もっとレベルの高い日本語を用いたいのだ。相互の信頼関係のレベルが非常に高いがゆえの連携が見事だったのだ。

 そして攻撃。前半、負傷者がいなければレギュラとしての出場が難しいと予想されていた小林と山岸が、敵のプレッシャをかいくぐりながら(傍目には「おい危ない!」と思わせながら)鮮やかなショートパスをつなぎ、敵を引き付けた上で中央の宮本と酒井につなぎ、最後は右サイドでフリーになった川上ショーの起点となる場面が再三見られた。これを単に「組織の見事さ」と言いたくはない。お互いの完璧な相互理解があってこその知的な展開ではないか。
 そして見事な個人能力、言い換えれば個人のヒラメキ。上記した周囲の準備で生まれた川上ショー、右サイドでフリーになる度に見せる突破(走る方向と逆にボールをつつく得意のフェイントを再三見せてくれた)とクロスの見事な選択。大谷の股抜きを含む独特のリズムのドリブル。冴え渡った荒川の懐の深い回転と強引な前進(アナウンサが再三、敵国のFWについて「世界最強の2トップ」と騒いでいたが、この日のプレイを見る限り、それを言うなら当方のこの2人だろう(笑))。「Not Her Day」ではあったが度々敵の逆をつく縦パスで変化を演出した澤(まだ彼女の調子がピークでないと言うことは、今後チームのレベルがもっと上がると言う事なのだ!!!)。そして、あの信じ難いアウトサイドキックのスルーパスを通した小林。これらは、皆個人個人のヒラメキ(これをサッカーでは能力の高さと言う、背が高いとか足が速いのは付帯条件に過ぎない)のレベルがいかに高いかを如実に示してくれた。
 後半、筋力と体重の強さを前面に押し出してきたスウェーデンに押し込まれた。確かに相対的に敵と味方とボールと3者が縦に並ぶ場面では苦しんでいた。しかし、それぞれが横に並んだ場面では、とっさの判断と俊敏さで敵とボールの間に身体を入れる事で、ほとんど優位に立っていた。天賦の肉体能力では負けていたかもしれないが、後天的な鍛え方では十分に勝っていたのだ。

 ここまでチーム力を上げてきた上田氏及び氏を支えるスタッフにも最大限の敬意と謝意を表したい。

 この日の選手交替そのものは巧くいったとは言い難いが、結果的にはエースの荒川と、今後どうしても勝負どころで起用すべき小林を休ませる事ができた。本来のポジションでなくやや気の毒だった安藤を含め、丸山、柳田も試合経験を積めた。報道によれば山本の体調も回復のきざしと言う。ここまで見事なサッカーを見せられると、初戦にピークを持って過ぎではないかとも、心配になるが、上記した澤への向上の期待と含め、まだまだ戦いながらチーム力を上げ得る潜在力も感じる。
 ここまで来たのだ。他国にはない技巧と判断力を前面に押し出した美しいサッカーで、是が非でも世界を席巻してもらおうではないか。

 そして、小野よ、那須よ、闘莉王よ、今野よ、大久保よ、達也よ、続くのだ。

投稿時間 2004年08月12日
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