blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ 高校選手権の将来

 高円宮杯が非常に充実した大会になり、各地域でユース年代のサッカーでリーグ戦が定着している現状で、正月の風物詩でもある高校サッカー選手権はどうあるべきか。もちろんサッカー界の都合だけで事は運ばず、日本テレビや高体連の思惑もあるのだが、いくつか考えてみた。

 まず誰でも考える事は、連戦を無くし、45分ハーフ、延長戦ありに変更する事だろう。
 連戦を無くすのは、各高校が冬休みに入った26日あたりから大会を始めれば何とかなるし、TV局が毎日試合が無いと困るならば、1日ずらしで大会を進行させる手もある。数年前にやったように決勝戦を1週ずらした1月中旬にする手段もとれる。
 45分ハーフにするのは、放映枠との絡みが出てくるが、延長戦よりは導入しやすいので、サッカー協会は早々にでも主張をすべきだろう。
 問題は延長戦だ。日本テレビに納得させるよい知恵が浮かばない。録画による時差中継にしても、延長に入る試合だけ後半から放送が始めるようなバレーボールみたいな見え見えの放送をする訳にもいかないし難しいところ。毎日の試合後に、高校サッカーダイジェストみたいな枠を準備してもらえればよいのだが、そう考えると新たなスポンサ開拓が必要になるような大騒動になりかねない。このような問題にこそ、日本協会会長に頑張って欲しいのだが(以下略)。

 次にトーナメントでよいのかと言う話。各県1校が本大会に登場する事は必須なのだから、長期に渡るリーグ戦にするのは難しい。この件については、友人がユニークな4チームのグループリーグ案を提示しているので紹介しておく。確かに大会期間は伸びるが、各チームが3試合できるのは、各地方局にとっても悪くないので、TV局の賛同も得やすいのではないか。大会日程の長期化対応は、上記の連戦を無くす方案で解消可能と考える。真剣に検討するに値する方案だと思う。

 さらにはクラブチームを参加させられないかと言う件。
 一方で「高校生活最後の1月のこの時期に高円宮杯を持ってこられないか」と言う正論が多い。しかし、私はそうは思わない。高円宮杯はエリート選手達が覇を競う、言わばユース世代のJリーグ。一方、高校選手権は多くの選手、チームが決勝大会にまで進出可能な、言わばユース世代の天皇杯だ。ユース世代は高校だろうがクラブだろうが、日本の学校制度の関係で3月で1つの切れ目を迎える。その切れ目にできるだけ近い正月に、多くのユース世代選手の夢がつながる大会を置いておきたい。これは約30年前に、その夢(正確には錯覚と言うべきかもしれないが)目指して、毎日グラウンドで走り回り削り合っていた元サッカー少年のノスタルジーかもしれないけれど。
 したがって、むしろ私はこの高校選手権を本当の意味でも「天皇杯」化するために、クラブチーム(ちなみにクラブチームと言うのはJのユースクラブだけではない)にも参加の道を開いて欲しい。
 TV局からすれば「朝練のために早朝起きて弁当を作るお母さん」がいればよいし(これは高校の部活だろうが、クラブユースだろうが同じ)、「苦節何十年の高校の先生」の代わりは「負傷に悩まされたかつての名選手だったユース監督」が使えるので、クラブユースを参加させる事にそれほど文句は言わないだろう。むしろ、「ユース代表だ」、「来期からはJ入りだ」とアナウンサが絶叫しやすくなるし、同じ高校に所属する選手が高校チームとクラブに分かれて戦うなどは格好のネタになるから、賛同は得られやすいのではないか。唯一問題は「負けている試合終盤に涙を流す美少女」の確保だが、Jクラブのユースならば、サポータが大挙して応援に来るだろうからそこから探していただこう。ただし「美少女」ではなく「美女」になるかもしれないが。
 もっとも、真面目な話、クラブチームの高校選手権出場実現は大変障害のある構想なのだ。高校サイドからはクラブユースとの選手勧誘合戦に「高校選手権の存在」が貴重な要素になっている部分もあるので強烈な反論が相当出てくるだろう。また、予選にしても、クラブチームを地域予選から加えるとなると、Jクラブがいる県の高校からは相当の反論が渦巻くのは間違いない。一方で、クラブチームを別枠で高校選手権本大会に出場させるとなると、「別な意味での不公平感」も高まり、これはこれで反論を生むだろう。しかし、サッカー界は常にこの事を考え、ユースサッカー界の発展を考えて行く必要があると思う。

 最後に全く視点を変えた話。これだけ多くのチームに優秀な選手が多数いるのだから凄い。そして、ここまで日本全体の選手層が厚くなった以上は、この裾野の広さをもっと有効に活かしたい。Jリーグのスカウトのお眼鏡に叶わずとも、優秀な素材は多数いるはずだ。さらに言えば選手権に出場できたタレントすら、氷山の一角と言ってもよいだろう。意欲ある優秀な選手がユース世代以降も(高校卒業後も)真剣にサッカーを続け、潜在力を磨ける環境を作っていきたいところだ。今年高校を卒業する無名選手の中に、かつての中澤や中村憲剛と同等の素質を持った若者が多数いるかもしれないではないか。
 この時点でJクラブから声がかからなかった若者の多くは大学で自らの限界に挑戦していくのだろう。これも有力なキャリアパスである事は間違いない。しかし、それ以外にもJFLや地域リーグの強チームで、有為な若者が力を蓄えられる機会が増えるのならばそれに越した事もない。重要な事は、トップへの夢をあきらめない若者が生計を立てながら球を蹴る事のできる環境が多様にある事なのだ。このような多様な環境を準備するための制度設計こそ、日本協会が真剣に考えるべきことのはずだ。以前にもも述べた事があるが、今の日本協会の財力があれば、そのような制度設計を検討する人材を雇用する事は可能なはず。その構想を、各地域協会やJクラブを通じて実現するだけの社会的なパワーも、今のサッカー界にはあるあはずだ。
 毎回毎回陳腐な事を述べていると言われようが、福島に中学生を集めるよりも、もっと重要で高邁な事を今の日本協会ならばやれると思うのだが。

投稿時間 2007年01月10日
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