blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ 恐れ入りましたアルゼンチン(3)

 しばらく長居の惨禍について触れていなかったが、あれだけ酷い目にあったのだから、2日間分の日記で書ききれるものではない。

 前半の半ばくらいだったか、サビオラが(アルゼンチンから見て)ペナルティエリア左外に大きくふくらむ実に気の利いた動きで日本守備陣の裏をつき、楢崎と1対1になった。インサイドキックでファーサイドを狙ったが、事前のふくらむ動きの後のために身体を十分に開く事ができなかったのか、シュートはコースが甘く、横っ飛びの楢崎が防いだ。くだんの女友達がつぶやいた。「今日のサビオラ、ダメ」。私は「あの1対1になる動きだけでスゴイ、贅沢を言ってはいけない」とたしなめた。だって、そうじゃないか。あの動きだけで日本のDF全員が振り切られたのだから。
 しかし、サビオラへの彼女の指導、激励は有効となる。直後、ソラリの仕掛けからアイマールが日本ペナルティエリア内に見事なドリブルで進出。自らシュートを打つと思わせ、一旦長居中から悲鳴を上げさせておいて、おもむろに後方のサビオラにやわらかい好パス。受けたサビオラはペナルティエリア外から一見無雑作だが高精度のシュートを決め、改めて長居中からの悲鳴を引き出した。あのシュートを何と形容していいのだろうか。ペナルティエリア内で、全くフリーになり落ち着いてサイドキックでボールをころがすシュートと言うのは、よく見ることができる場面だ。しかし、(たとえアイマールからのパスが戻し気味の実にやわらかなものだとしても)あの距離からあそこまで冷静に流し込まれると(しかも軽く浮かせて)、その度胸とゴール感覚には唖然とするしかない。リーベル時代のチームメートであるアイマールはそのサビオラの能力を知っているから、あの戻しパスをしたのだろうけど。
 例えて言うと、あのゴールは、プレッシャのない試合で大差がついた後のPKを蹴るかのようだった(サビオラからすれば親善試合の日本戦はプレッシャではないか)。

 バルセロナでサビオラのゴールへ向かう体勢の作り方を見るたびに、隣で頑張っているクライフェルトのプレイが固く見えてくる。クライフェルトと言う選手は、オランダの育成プログラムが生んだ傑作。しかし、極めて乱暴な比喩となるが、クライフェルトがサビオラの横にいると、我らが鈴木のような雰囲気を感じてしまうのだ。これは、サビオラの天性としか思えない、簡単で柔らかく高速にゴールを向き、丁寧なシュートを決める振る舞いが、凄すぎるからだ。
 そして、あのペナルティエリア外から決めたPKもどきで、生でサビオラ体験する事ができてしまったと言う事。

 日本がサビオラ級のプレイヤを作り出す方法があるとしたら、点を取るのが上手な子供を皆CFで試してみる事のように思えてくる。具体的に言えば、十数年前、沼津と横浜と盛岡の指導者は、目の前のパスセンスあふれる少年をMFに使わずCFで試してみるべきだったと言う事か。でも、そうするとアイマールもリケルメも生まれない。もちろん、コロッチーニも。いや、まことにサッカーは難しい。

投稿時間 2003年06月13日
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