先日の高校選手権決勝についてのエントリのコメント欄で、様々な方が高校サッカーのあるべき姿について論じて下さっている。私も議論に交ぜてもらうのが一番よいのはわかっているが、どうにも皆様の議論のテンポが速すぎ、どうにも不義理をする事になってしまい、申し訳ない事この上ない。と言う事で、自分なりの意見を述べてみようと思う。
今回の高校選手権をめぐっては大きく分けて2つの議論があったように思える。1つ目はJのユースクラブと高校チームとの競合関係。もう1つは、拙BLOGのコメント欄でも議論が沸騰した、高校チームごとのスタイルの相違である。
ともあれ、今日は前者について講釈を垂れる事にする。
ここ数年の高校選手権の度に、有力選手の多くがJユースクラブに所属するようになり、高校サッカーのレベルが下がったと言及されてきた。現実的にトップレベルの高校サッカーの監督から、そのような発言がされた事もある。先日北朝鮮を破ったユース代表メンバのほとんどがJのユースクラブ出身者だった事もある。さらに、高円宮杯の決勝戦が2年続いてJクラブのユース同士の決勝戦となった事もある。それらによって、今シーズンに関しては一層その傾向は顕著だとも言われた。さらに大会中、(高校選手権を盛り上げようとするあまり)日本テレビが「ユース代表はJユースの選手が多いが、A代表は高校サッカー出身の選手が多い」と、絵に描いたような統計処理判断の誤りをヒステリックに連呼したのも、かえって高校サッカー衰退かと思わせた。
これは中長期的な傾向として避けられないものではないかと思う。Jリーグ各クラブのブランドイメージは圧倒的なものがある。その地域の優秀な小中学生は放っておいても入団を希望するだろうし、他地域の子どもを勧誘する際にも有利だろう。まして、ある程度以上の天分に恵まれたと、本人も両親も周囲も思っている場合では、「プロ選手になるためには、名門高校よりもJクラブの若年層組織に加入すべし」と考える方が自然だし。もっとも、Jユースチームの選択眼の怪しさにも留意の必要はある、小学6年生の中村俊輔をマリノスがクビにしたのは有名な話だし、本田圭祐(現グランパス)の潜在力を見極められなかったガンバと言う話もある(一方でガンバは幾多の名手を自前のユースクラブから育成しているから、一層このエピソードは面白いのだ)。
この流れに高校チームが対抗するために取っている手段が、中学からの一貫教育のようだ。人材確保が難しくなった分、自前での育成を検討しようと言う事だろう(下世話な言い方をすれば有力選手の囲い込み狙いとも言うけれども)。これは強豪私立高校の中学部強化のみならず、名門公立高校も近隣地域のジュニアのクラブの育成を進めようとしているようだ。
もっとも、これは決して新しい考え方ではない。大都市圏以外の地方では、高校サッカーの充実は、その地域の少年サッカーの充実と強い相関があるのは当然の事だったのだから。清水FCから育った名選手を吸い上げて80年代の高校サッカーをリードした清水商、清水東、東海大一と言った名門高校。現在の愛媛FCの前身とも言うべき南宇和高校も地域の少年育成により、幾多の名手を生んだ。今大会を制覇した野洲高校とセゾンFCとの連携も、同様のものと考えてよいだろう。
このような強化プログラムを充実させた場合、Jクラブに対する強力高校チームの強みもいくつかある。まず何より、サッカー以外にちゃんと学校教育をする事ができる事。これは結構重要事項だと思う。もし選手が本当のトッププロを目指そうと言うならば、最終的な働き先は海外となる訳で、その場合間違いなく重要になるのは語学力。そのような教育までパッケージ化して提供可能なのは、学校であるがゆえとなる。一方でもしその選手が、プロになれる程成長できなかった場合、その選手が高校でしっかりとした基礎教養を身につけていれば、それはそれで先々の人生プランに間違いなくプラスになる。
さらに名門高校チームが優位に立てるのは、「育成の実績」。Jユースクラブは歴史が浅いために、小嶺、松澤、大滝、井田、古沼と言った「実績のある名指導者」を持たない。もちろん、ガンバの上野山、サンフレッチェの森山など、目を見張る実績を挙げている優秀な指導者も多いのだが、まだ歴史が浅い(有力なJクラブが高校サッカーの名伯楽をリクルートするのは近い将来大いに予想される事だが)。
と、考えてきた場合、Jクラブと高校サッカーそれぞれの多様性がある事が、改めて認識される。このような多様性を維持しつつ、日本中で前途有為な若者たちが切磋琢磨する機会が得られ続ける事を切に望むものである。
