blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ まだベルドンしません

 最初にお断りしておくが、私はしつこいと言われようが、ジーコ氏は退任すべきと言う考えは変わっていない。理由はチェコ戦後に述べた通りで、ジーコ氏率いる日本代表は過去何度かよい試合をしたにも関わらず、肝心のオマーン戦のみならずシンガポール戦まで無様な出来だった事、その際のメンバ選考が余りに「思考を拒絶したもの」であり「真剣に監督に取り組んでいるのか」疑わしいものだった事、があるからだ。つまり、よい試合を見せられても、また酷い試合を見せられるのではないか、と言う不安を感じずにはいられないからだ。
 おそらく、アジアカップで内容も結果も良好で、ワールドカップ1次予選の残り試合を納得できるメンバ選考でキッチリと勝ち、2次予選と本大会へのチームの軸線が確立するまでは同じ事を言い続けるだろう。

 そのような偏屈なジーコ氏嫌いではあるが、前回と今回の欧州遠征が(稲本の悲運を除いては)大変実りあるもので、日本代表史に残るものだった事は断言できる。具体的には、長きに渡り(そして将来を含めて)代表の中核だった(であろう)中田が負傷欠場したにも関わらず、小野、久保と言う日本サッカー史に残る2大タレントを中心に、欧州の列強−チェコとイングランド−と見事な戦いを演じたのだから。
 小野はイングランド戦で41試合目のA代表試合だがチェコ戦以降ほど君臨も統治も行った事はなかった。久保も24試合目だが、このシリーズほど圧倒的な得点能力を見せ付けた事はなかった。そして、何のかの言って、この2人が適切に働けるように、他の9人を並べて、相応の試合を演出したのは、間違いなくジーコ氏だ(個人的にはその並べ方はまだベストにほど遠いとは思うが)。遅まきながら、ドイツ大会ベスト8以上を目指すチームが軌道に乗り始めたのだ。

 このイングランド戦については、スタメンの選考、各選手のタスク(特に昨日愚痴を述べた稲本の位置取りやアレックスの動きが、アイスランド戦よりは改善されていた、あくまでも比較級ではあるが)などジーコ采配は納得できるものだった。特に感心したのは交替劇。
 人間贅沢なもので、後半同点に追いついて、なお押し気味の展開を見せられると、一気に逆転しアウェイでの歓喜を期待したくなるものだ。私は久保と玉田の交替の瞬間には一瞬「何故だ」と不満を持った。しかし、後から冷静に考えてみれば、これはジーコ氏が正解。この世界屈指の強豪に敵地で同点の試合をしている訳で、しかも1週後にワールドカップ予選を控えているのだから、負傷気味のレギュラ2トップの交替は妥当。ここで、がんばりの利く鈴木の起用で守備を強化するのは適切だし、不振を極める柳沢をインド戦前にもう1回試すのもまあ仕方がないだろう(このテストは「柳沢NG」と言う結果となったが)。
 さらに稲本の悲劇の直後、ほんの僅かな時間だが、福西を起用したのも、ちょっと驚き。今までのジーコ氏だったら、ステレオタイプに「ボランチ3番手」の遠藤を起用していただろうが。
 交替劇以外でも、不振の中村をしつこく起用し、(まだまだ魔術師度は物足りないが)得点に絡む活躍をさせて自信を回復させるのに成功したのも評価される。加えて、アイスランド戦にしても、後半は全く異なるやり方でのテストも実施し、なお勝利を収めたのも大したものだ。
 まあ、偏屈男としては「何だ、(やる気になれば)やれるんじゃないか」と一言つくのではあるが。

 なお蛇足ながら強調しておきたい。私は冒頭に述べた通り、相変わらずジーコ氏退任論者である。しかし、以前から述べているように、「何が起こってもジーコ氏が悪い」と言う理論には賛成しかねる。例えば、「この引き分けはイングランドが手を抜いたからだ」とか「本番?のインド戦前だからイングランド戦はテストに専念すべきだった」とか「稲本の負傷は交替させなかったからだ」とか「使わないなら呼ぶな」とか「トルシェ氏の遺産で戦っている」とか。各論の是非はさておき、このような感情的な反論(「じゃあ、お前はどうなんだ」と言われるかもしれないが(笑))は、かえって議論をおかしくすると思う。イングランドは十分強かったし、イングランドとやるからにはできれば勝ちたいし、中心選手の稲本は可能ならば最後まで引っ張りたいし、単独チームには悪いが2試合する遠征には2チーム分相当の選手はできれば召集したいし、今の日本サッカーの繁栄はトルシェ氏1人の功績ではない。

 それにしても、美しい得点だった。中村がフリーになる前の稲本、久保、加地の高速パスワーク、中村が久々に見せてくれたスルーパス。使い手が冴えていれば有効なアレックスの前進、久保の陽動動作、そして小野!!!
 まあ、悲嘆にくれているイングランドの関係者の方々には、「あれだけの得点を奪われるのも1つの経験だよ、ユーロではあそこまでキレイなパスワークをするチームはそうないだろうからね」と、思い切り不遜な態度を取る事にしようか。

投稿時間 2004年06月02日
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