blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ 出発前夜

 今成田のホテルでこの文章を書いている。私は明日旅立つ。とにかく強引に休暇を取り、後は飛行機に乗るだけの状態になってみると、今までの事が多重に思い起こされてきて、何とも言えない気持ちになってくる。

 まずドイツで開かれる大会と言う想い。
 私がリアルタイムにワールドカップを愉しんだは32年前の西ドイツ大会。7大会をはさんで再びドイツで行われる大会。自分自身としても、同じ国で行われるワールドカップを愉しむのは初めて、少々感慨深いものがある。当時の中学生にとって、あこがれの対象でしかなかった同国でのワールドカップに参戦できる感慨は大きい。
 もっとも、32年前のホスト国は西ドイツで、今回はドイツ、と言う違いがある。32年前の大会では、当時の東ドイツ−西ドイツと言う試合が実現した。圧倒的優勢が予想された西ドイツだが、東ドイツの逆襲1発に敗れてしまった。そして、この「両国」のA代表マッチは、たったのこの1試合。そして32年間の歴史のほぼ半分となる90年代初頭に、「壁」が崩され、東西ドイツは再統合され、今回は「ドイツ」大会となる。歴史の移り変わりとは、大きいものだ。
 この大会の開幕戦は、ブラジル−ユーゴスラビア。当時の「ユーゴスラビア」と言う国は、ドイツとは逆に幾多の国々に分裂してしまった。その分裂した1つ1つの国それぞれが、またサッカー強国である事にも恐れ入る。そして、その国が分裂する直前に代表チームを率いていた偉大な監督が、日本で堂々たる存在感を発揮する事になるなど、およそ32年前には想像すらしなかった事だ。
 さらに、同じグループで、ブラジルに加え、ユーゴスラビアから分裂したクロアチアと戦うのだから。さらに言えば、先日苦杯を喫した豪州は、32年前の大会以来の出場でもある。
 いささか、こじつけたような感もあるが、サッカーを観続けてきた事により感じる事のできる様々な因縁を考えながら、私は現地に向かう。

 そして、私の日本代表。
 非常に苦しい状況に追い込まれている。しかし、私はもう割り切っている。全ては経験なのだ。長い歴史を持ち、さらには無限にも続こうかとも言う日本のサッカー界。いつかワールドカップで優勝するためには、ありとあらゆる経験を積み続けるしかない。ただ、ワールドカップ優勝を最短で経験するためには、出来る限り効率よく経験を積んでいきたいものなのだが。
 それに対し私ができる事は、真剣に集中して試合を楽しみ、必死に応援する事だけ。
 ドイツで私は日本の試合を、クロアチア戦、ブラジル戦、そしてトーナメントの1回戦の3試合を観戦する。以前も述べた事があるが、私は86年メキシコ大会以降、90年イタリア大会を除いては、日本代表がワールドカップで戦う最後の試合(予選だろうが本選だろうが)を、必ず現地で観ることができた(90年大会の最後の試合は、当時渡航がほとんど不可能だった北朝鮮だった)。ワールドカップと言う大会は、当たり前の事だが最後まで勝ち残れる国はただ1つ。言い換えれば、必ず負ける大会なのだ。したがって、大事なのは「最後にどう負けるか」と言う事になる。私にとって最後の試合を観る事はとても大切な事なのだ。
 今大会の旅程を組むに当たって私は本当に迷った。情けない事だが、本業の都合を考えると、観る事のできる試合は3試合が限界。そして、今大会の日本の目標は準々決勝進出だ(不思議な事に、協会会長も代表監督もある時から、その当たり前の事を一切発言しなくなっているのだが)。そうだとすれば、本来であれば、ブラジル戦、1回戦、準々決勝の3試合を観戦すべきであろう。けれども、私はジーコ氏を信じ切れなかった。準々決勝まで進む確率が高いとは思えなかった。かくして、上記の日程を選択した次第。
 だからこそ一層、今回の旅の目的はジーコ氏への謝罪なのである。トーナメント1回戦で、イタリアかチェコを破り、歓喜の渦の中、今までの生涯で最大級に後ろ髪を引かれながら帰国する。信じる事ができなかったジーコ氏に、限りない感謝と共に謝罪をするのだ。今までの失礼な発言のみならず、準々決勝進出を信じられなかった事を。

 だからこそ、とにかくクロアチアに勝つのだ!!!

投稿時間 2006年06月17日
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