戦争や伝染病など人智の及ばない事情での日程決定だったので仕方がない部分は多々ある。しかし、「決戦」(と言うには、あまりに盛り上がりに欠いているが)を2日後に控えて、五輪代表予選UAEラウンドのメンバを発表するのは(せざるを得ないのは)、マーケティング的な見地から考えても、あまりにまずい。サッカー狂以外の方々には、両チームの識別は困難だろう。上記したように今回は「仕方がない」のかもしれないが、日本協会は「商売(つまりはファンサービス)への障害の除去」に、いっそう尽力すべきだ。
ともあれ、UAEラウンドのメンバが発表になった。森崎和不在でテンポを落としたい時にどうするのか(青木の横パスを冷や冷やしながら愉しむのだろうか)。敵が(日本から見て)右サイドにFWを固定してきた時に、石川が最終ラインに下がるのか(まさか、石川を外して徳永を投入したりして(笑))。従来からこのチームのレギュラでなかった茂庭を、メンバ一新された最終ラインにどう馴染ませるのか。松井ですら11人からはみ出る現状で、前田をどこに使おうとしているのか。一度も準備試合で起用されていない成岡が、(たとえ調子が悪いにせよ)ずっと起用されてきた根本より評価が高いのか。
まあ、突っ込む気になれば、いくらでも突っ込みどころがあるのは、選手層が厚い事の賜物。どのようなメンバ構成になったとしても、私もこの駄文を読んでいるあなたも、上記のように突っ込みたくなるものだ。結構な事なのだ。アルゼンチンワールドカップ直前に、メノッティ氏が「アルゼンチン国民の数だけ、メンバ構成が考えられる」と語った記憶があるが、我々もアルゼンチンに近づいている、と前向きに捉えよう。
ただし、大久保については考え込んでしまう。つい先日、ジーコ氏からも、山本氏からも、引く手あまただったのに。この「取り合い騒動」の主役兼東アジア選手権敗北の総責任者が、いずれのチームからも落選してしまったのだから。
まずA代表。高原、柳沢、鈴木の海外組、久保、黒部、本山の国内組と、大久保にはライバルが多数いた。ただし、昨年終盤までは国内組の中では大久保の評価が一番高かった。ところが、東アジア中国戦での久保の爆発(久保のA代表試合での得点はこの1試合だけだが)と、例の退場劇によって、地位が逆転したと言う事だろう。まさか、準備合宿での生活態度が悪かったとか、先日のイラク戦が不出来だったから、と言う理由で落とされたとは思えないし。とするならば「取り合い騒動」の前に、ジーコ氏ランキングでは下位に落ちていたのだと思うのだが、それでも、大久保に拘泥したのだから、ジーコ氏らしい。
次に五輪代表。まず田中達也だが、これは完璧なチームのエース格。そもそもジーコ氏がA代表候補にするならば大久保でなくて田中でないか、と思わせるほどだから不動。山本氏は、技巧派とポストプレイヤの組合せを好むから、準備試合で得点も決めポストプレイもまずまずだった高松、平山も決定。残るは、ワールドユース得点王坂田、J屈指の強豪ジュビロでレギュラ前田と、大久保の選択となる。とすると、無事?ジーコ氏から解放された大久保だろう、と普通の人なら思うのではないか。まして、つい最近まで「取り合い騒動」を、山本氏自ら演じていたのだから。
では何故、大久保は落ちたのか。コンディション不良なり酷暑対策不足か。それならば、茂庭も外されておかしくない(石川は外せないにせよ)。むしろ、山本氏は、田中の充実から「大久保をベンチに置く」事の取り扱いの難しさを考えたのではなかろうか。あり余る準備期間がありながら、この「ちびっ子ドリブラコンビの同時起用」は、ほとんど試されていないし。UAEで、大久保がベンチに置かれたとしたら、マスコミの大騒ぎが見物ではないか。
と、なる事を「取り合い騒動」前に、山本氏は予見できなかったのだろう。そして、A代表からこぼれてきて初めて、慌てたのではないかと見る。
繰り返すが、全ては豊富な選手層の賜物。よい時代になったものだ
