バロンドールと言うタイトルは、類似のタイトルが多々登場しつつも、最も老舗的な感覚がある世界最高峰の個人タイトルと言っても過言ではない。もちろん、こう言ったサッカーの個人表彰そのものが非常に難しいのは、随分前にも述べた通りだが。
そのバロンドールを、晴れて?世界チャンピオンの主将でかつ世界最高峰の守備者であるカンナバーロが獲得した。元々、バロンドールの歴史を考慮しても守備者が選ばれる事は稀。GKのヤシン、リベロのベッケルバウアとザマーのみである。このうち、ベッケルバウアは最終ラインで冴えた守備を見せたいたのは確かだが、実質的にそのメインの武器は守備と言うよりは前線への展開。ザマーに至っては、洗練された闘莉王(そもそも洗練された闘莉王と言う概念があるのかどうかはさておき)と言うか、敵の守備の弱点を見つけて、スッとそこに前進して得点に絡むのが魅力の選手だった(むしろこの2人よりも、同じドイツ人のマテウスの方が所謂後方の守備者っぽい雰囲気があるのが面白い)。
そう考えてみると、純粋な守備者がバロンドールを獲得したのは、ヤシン以来。フィールドプレイヤの守備者としては初めてと言ってもいい事態だと思う。そして「守備者」と語った時に、カンナバーロは「史上最高の守備者」と言う印象すらある。例えば、上記のベッケルバウアにしてもザマーにしても、あるいはバロンドールにかすったDF、ファケッティ、B・ムーア、フォクツ、クロル、カブリーニ、F・バレーシ、ライカールト、ジョルジーニョ、デザイイ、リザラス、カフー、そしてマルディーニ、などを思い起こしてみても、皆「守備も凄いが、攻撃もまた凄いと言う選手」と言う印象がある(95年以降、欧州外の選手も選考対象になったのを織り込んでみました)。
しかし、カンナバーロは違う。とにかくこの男は守備者だ。しいて、同タイプでバロンドールかすり選手を考えると、K・H・フェルスターとテュランくらいだろうか。ただK・H・フェルスターは、単純な1対1の強さは見事だったが守備の全体組織と言うタイプではなかった。またテュランは98年のサイドバック時代は、攻撃でフランスの危機を救ってみたところで、守備者とての「純粋性」に欠け、またここぞと言う場面でやや肉体の強さを前面に出し過ぎる。その点、カンナバーロは若い頃からの1対1での粘着的な強さを残したまま、全守備網を指揮すると言う、稀有な能力を発揮した守備者だ(一時のパルマで、カンナバーロとテュランの2人がセンタバックを組んでいた事があったっけな)。と言う事で、単なる守備者としてカンナバーロは「史上最高」なのではないかと思った訳(あ、もちろん60年代以前の選手は、よくわからないところがあるので、暴論だと言う事は承知しております)。
カンナバーロを生堪能したのは98年ワールドカップだった。私はこのような粘着質の守備をする選手が大好きで、すっかりそのプレイ振りに惚れ込んだ。ただ当時は今年のカンナバーロほど凄い守備者になるとは思いもしなかったが。ちょっと悔しいのは、今回のカンナバーロを生観戦できなかった事。日本が2抜けして、カイザースラウテルンで戦うはずだったのだが。
カンナバーロほどスケールが大きくないが、日本人選手で言えば古くは石崎、新しくは薩川、大森など、同様の系列の選手が過去から登場し続けている。。オシム氏が作ろうとしているチームの守備ラインは、攻撃センスあふれる選手が守備ラインに並び、そこからの美しい展開が魅力的。しかし、そのようなチームに1枚「粘着質の守備者」がいるのも悪くないと思う。
だから、頑張れ水本!
