blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ オシム氏を支えられるのか

 過日、女子代表の中国への完勝をTVで堪能した。組織的で献身的でそして何より知的な守備ライン。澤の少し前で技巧とアイデアを発揮する大野を軸に、昨年の東アジア選手では、やや不満だった即興性も、かなり改善されていた。ベテランの酒井が不在だったが、負傷なのか若手が成長した故の不出場なのか定かではないが、MFでの守備も見事なものだった。贅沢を言えば、逆に先制されてしまった時に何とかするためには、攻撃にもう少しの変化が欲しいが、そのための武器はまだ隠し持っているものと期待しておこう。
 あと1勝でワールドカップ出場、よりによってその相手は豪州、朗報を待ちたい。

 A代表監督オシム氏、五輪代表監督反町氏、世界屈指の大ベテラン監督とJで堂々たる実績を上げた若手の日本人監督。就任の経緯に目をつぶれば、史上最高の陣容と言えるだろう。過日放送されたオシム氏の特集番組で氏が日本サッカーについて問われ、「追いつこうと思うから離されるのだ」などと語られるのだから、もうたまらない
 一方で、私のような日本代表サポータが喜ぶと言う事は、その度にジェフの関係者の方々は胸をかきむしられるような思いを味わうのだろうから、今回のオシム氏招聘劇にはやりきれない思いを感じる。先回のエントリでも述べたが、協会首脳の無反省ぶりには憤りや悲しさを通り越して、驚きさえ感じてしまう。川淵会長も田嶋委員長も、周りが見えないのみならず、まともな判断能力を持った人が周囲にいないのだろうか。
 やりきれないのは確かではあるが、現実的にオシム氏に代表監督として戦っていただける事になった。あのいい加減な招聘に対して、オシム氏が「諾」と言ってくださったのだから、まだ俺の代表チームは捨てたものでは無いのだろうか。
 となると、問題は日本協会のバックアップ体制になる。今日の本題はその問題への不安を述べる事にある。

 1つ目。オシム氏の年齢的な問題。
 オシム氏は60代半ばで、しかも持病があると言う話もある。取材している記者をからかっただけかもしれないがこんな迫力ある発言をした事もある。そして、日本代表監督は大変な激務なのだ。
 Jリーグを毎週複数試合視察し、さらに見逃した試合のVTRをチェックする。時に直接のライバルとなる韓国や豪州やイランの動向調査、いや本大会対策と言う意味では欧州選手権からコパアメリカからアフリカ選手権などの国際大会のスカウティングのために足を運ばなければならない。それと別に、欧州でプレイしている選手の視察及び本人や所属クラブとの打ち合わせも定期的に必要だろう。一連の報道から推定するに、前任者は上記の海外における活動をほとんどしなかったらしいのが悲しいが(もしかしたらブラジルに帰国するフリをして、欧州行脚をしていたのかもしれないが)。しかし、オシム氏のような真摯な人であれば、そのような活動をせずにはいられないだろう。オシム氏の部下が代わりにそのような勤めをすればよいのだが、あのような経緯で招聘したものだから、ジェフで使い慣れたスタッフは一切連れて行く事はできない。日本協会はそこまで、しっかりと考えているのだろうか。
 おそらく、その活動は反町氏を軸に、コーチに就任した大熊、加藤、井原、川俣と言った面々(これらの面々の妥当性については別に議論したい)あるいはスカウティング担当の協会スタッフにかかってくる。前任者がワールドカップ直前に友人の雇用を要求し日本協会がそれを受けたのは今となれば懐かしくもアホらしい思い出だが。少々残念なのは、一部報道で「入閣確実」と言われた小野剛氏が不在な事。加茂、岡田時代に、その抜群の調査力で名参謀と言われ、(先般辞任したとは言え)サンフレッチェでも監督としてそれなりの実績を残した小野氏だけに、オシム氏、反町氏との協調作業には結構期待していたのだが。

 2つ目。単独チームと代表チームの違い。
 我々が親しんできたオシム氏は、毎日一緒にいるジェフの選手を厳しく鍛え抜く監督、と言う印象が強い。しばしば話題になる七色(少しオーバだが)のビブスを駆使し、選手の頭と身体をクタクタにさせる練習はその一例。そして、日々オシム氏に鍛え抜かれた事で、タフで堅実な事が売り物だった坂本は国内屈指のオールラウンドプレイヤとなり、若年層から期待されていたものの潜在力を発揮しきれずにいる感があった阿部はアジア屈指の展開者として素質を開花させ、ジェフ加入時にはボールをまともに止める事のできなかった巻はブラジル戦でも十分に通用するストライカになった。いや、巻だけではない、佐藤勇人も、羽生も、山岸も、皆オシム氏に鍛えられて、成長してきた。彼らがA代表に選考されても驚く人はいないだろう。
 しかし、代表監督に求められる能力は少々異なる。各選手を日々鍛える事は叶わない。好みの選手を集め、限られた時間で方針を徹底させ、90分の戦いに全力を尽くさせる。もちろんオシム氏のそちらの能力もまた格段なのは、90年前後のユーゴスラビア代表監督時代に証明されているのだが、具体的にどのような方法を採るのかは、非常に愉しみだ。さらには、アルビレックス時代に、執拗に細かな指導(どちらかと言うと、こちらはその執拗さは「日々の作戦」面で顕著だった)で実績を挙げてきた反町氏が、オシム氏からどのような刺激を受け、監督としての能力を高めていくかどうかも、大いなる期待である。
 一方で、微妙な不安。オシム氏も反町氏も、コンセプトを徹底するために、出来る限りでの長期間の選手拘束を希望するかもしれない(さすがに山本氏の五輪監督時代のように非常識な要望は出さないと思うのだが...)。その場合、日本協会はますます難しくなる日程問題と直面する事になるが、どうさばくつもりか。

 3つ目。日本協会のサポート体制への疑問。
 前任者への最終評論は別途行うつもりだが、前任者は前任者で幾多の問題があったものの、日本協会が前任者を適切にを支える事ができていなかった事を忘れてはいけない。。
 例えば、久保の選考についてジーコ氏とマリノス間でのトラブル。あるいは、ワールドカップ半年前のインタナショナルマッチデーで欧州在籍組が参加できるにも関わらず、国内での花相撲を優先する愚挙。チームの規律を守れなかった選手をジーコ氏が代表から外す処罰に出たにも関わらず、当時の山本監督にその選手を五輪代表に選ぶ事を許すいい加減さ。これらの過去の問題を振り返るにつけ、日本協会の前任者へのサポートの悪さを改めて感じる。
 上記した強化日程の問題を含めて、最近の日本協会には「定見」が感じられないのだ。欧州組を召集できないエクアドルとの親善試合のためにJの公式戦を控えるガンバから宮本たちを取り上げておいて、一方で欧州組が合流できる東欧遠征にも関わらずJの花相撲のために宮本や中澤を拘束する。もっとも、それに対する不満を述べずにおいて、クロアチア戦後に「暑いから...商売のために酷い目にあった...」と語る事のできる前任者の神経もまた美しいものがあったのだが。

 ともあれ、サイは投げられた。
 極めて不幸な成り立ちではあったが、最高に近い陣容となった代表チーム首脳。頼むから、日本協会には適切なサポートを期待したい。

投稿時間 2006年07月25日
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