blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ ジーコ氏対マリノス

 欧州選手権はよくない。毎日毎日新しい刺激があるのは、情報遮断のための心労と合わせて寿命を縮めかねない。さらに追い討ちをかけるように、コパ・アメリカ、そしてアジアカップ。もう勘弁して欲しい。もっとも、ブラッター氏は、選手の健康維持すら気にしないのだから、野次馬が体調を破滅させるのなど考慮の外だろう。それにしても、こんなにサッカーを観ることができる幸せな時代が来るなんて。

 ともあれ、選手の健康とくれば、久保の奪い合いについて講釈を垂れない訳にはいくまい。
 
 Jリーグ佳境の最中ブラジルで休養していた、もとへ、おそらく欧州選手権をじっくり研究していたジーコ氏。久々に来日して早速やってくれました。キリンカップのメンバ発表で、
「久保はクラブで戦っていた上で、代表辞退してきた。納得できない。私の信頼できるドクターが診て、休養が必要か判断したい」(意訳、武藤)
 これは凄い発言だ。「じゃあ、お前は久保たちが必死にリーグを戦っていた時何をしていたんだ」と言う突っ込みは一切やめにしておくにしても。とにかく、ジーコ氏はマリノス関係者の発言を信用していないと明言してしまっているのだ。
 そりゃ、マリノスだって怒るよな。
 さらにジーコ氏は続ける。
「私はコンディションの許さない選手を、決してフィールドに出しません。(中略)選手を犠牲にして優勝するつもりありません」(サッカーマガジン7月20日号よりそのまま抜粋)
 これまた凄い発言だ。埼玉のオマーン戦で高熱を出しながら起用された山田や柳沢(柳沢は直後に入院)。シンガポールのアウェイゲームでは、長旅直後の欧州勢のほとんどが全く動けなくなった事は、どう説明されるのか。あれで「単独チームが自分を信用してくれる」と言えるのだから、大したものだ。もっとも、ジーコ氏の「その場限り発言」や「独特の記憶力」にはもう慣れたから、(この種の発言には)驚きはしないけれど、

 ただし、マリノスには前科がある事にも触れておこう。昨年11月のカメルーン戦、負傷のために代表を辞退した中澤が、直後のベガルタ戦に出てキッチリと活躍しているのだ。そして、マリノスはその後J1後期制覇に成功する。
 こんな誰も覚えていないような事を今更持ち出すのは、私がベガルタサポータだからだろう(笑)。一方で、当時のマリノススタッフと中澤の判断は間違いなく適切だったと思う。大体、当時のジーコジャパンではリザーブの選手は召集されても起用される可能性は極めて低かった。あの煮詰まったリーグ終盤で、どうせ出る可能性は極めて低い選手を代表チームに供出したがらない気持ちはわからなくもない。まして「オマーン戦やシンガポール戦を見て、コンディションが万全でない選手を代表に出したら拙い」と、マリノスサイドが考えるのは当然であろう。

 なお、ジーコ氏なり日本協会は、中澤辞退のタイミングで明確にマリノスを非難していない。邪推すれば、ジーコ氏も日本協会も、代表チームのプレゼンスが疑われるような事態だったのに、中澤の振る舞いに全く気がつかなかったのではないか。今回もジーコ氏が、マリノスへの不信感を明言しつつも、この「前科」について言及していなかった事は、「気がついていなかった事」の傍証となろう。

 ともあれ、日本代表監督とJのトップクラブ間には、大きな溝ができてしまった。これは日本代表の強化には大きなマイナスである。以上述べてきたように、この溝の発端はジーコ氏の凡人には理解し難い様々な言動が根本要因となっている。しかし、日本協会がその溝を埋める努力を、もう少ししていれば、ここまで大きくはならなかったのではないか。今回だって、ジーコ氏の意向を事前にマリノスサイドに伝え、一方で記者会見で余計な事を言わないようにジーコ氏を指導すれば、このような事態は回避できたはず。いずれも、それほど難しい事だとはとても思えない。
 私は以前から考えを変えていない。今日にでもジーコ氏は解任されるべきだと思う。しかし、日本協会がそうは思っていないのならば、せめてもジーコ氏の活動、言動に対して、万全のバックアップ体制を取って欲しい。
 繰り返すが、代表監督とリーグのトップチームの関係がここまでこじれているのは、主要因はさておき、日本協会サイドに責任がある。そして、このようなトラブルは、ワールドカップの上位進出を損ね兼ねない問題になり得るのだ。

投稿時間 2004年07月06日
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