blog武藤文雄のサッカー講釈

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■ クラマーさんへの恩返し

 2−0となった時点で、「敵地でドイツに勝つ」と言う歴史的偉業が現実になり、異様な興奮感を味わっていた。このような大会前の試合は、勝敗は度外視すべきものだろうが、さすがにあの白黒のユニフォームに対し、2点差になると、そんな事はどうでもよくなり、目先の勝利を追いたくなった。そのような意味では悔しい同点劇だった。さらに、終盤大黒が2回掴んだ決定機を決めていてくれれば。

 そう、あの白黒のドイツに敵地で引き分けて、悔しくて仕方が無い日が来たのだ。

 とは言え、ここは本大会直前、冷静に本大会への展望を語るべきだろう。
 
 まず 高原。いや、恐れ入りました。あのテヘランイラン戦以降の数々の誹謗中傷ごめんなさい。
 開始早々の回転からの思い切りのよいシュートに「おっ」と思ったが、その後は切れまくる柳沢と比較して、調子がよいのだか悪いのだかわからないプレイに終始した。
 あのCK崩れ、柳沢の巧みな入れ代わり→中村の独特の横ばいドリブルからの縦パス→(中田のスルーを経由して)柳沢が完全に前を向いてドリブル、完璧なスルーパスから高原完全にフリー。何かいつもの通り、悪い予感がしたが、とんでもなかった。落ち着いて、レーマンの体勢を見てサイドキックで上隅に決めた。Jリーグで得点王を取りドイツに移籍する直前の、ゴール前の冷静さが戻ってきたのだ。
 そして2点目。中田と駒野が右サイドで仕掛けを作っている際に、高原がゴール前中央から右サイドに素早い移動、私はこの移動そのものが嬉しかった。ドイツのCBが中村たちに気を取られた瞬間のタイミングの捉え方が絶妙だったから。そして、駒野が100%高原の意図を理解した低い高速パスを受けた瞬間、今度は素晴らしい予感がした。予感は当たった。凄い切れ味だったね。
 後はこの謝罪の念を、大会後感謝の念に切替させていただける事を。

 柳沢も骨折の影響を感じさせなかった。シュートだけは感心しなかったが、もうこれはこの人の特徴なのだから。しかし、久々の有料試合で、あそこまで身体が利くのだから恐れ入る。それにしても、何故この男はイタリアでは出場機会が得られなかったのだろうか。

 で、この2トップが調子がよいと、中田と中村で色々な攻撃が可能。まあ、1点目高原が抜け出る直前のドイツの守備が酷すぎた事はあるけれど。この日の最大の収穫は、クロアチアと豪州に、この日本のスローテンポから高精度にスピードアップするカウンタを守るためには、そう前掛りには来られない事を認識させる事ができたのが重要だと思う。これで、そう簡単に連中はアレックスを押し込む事はできなくなる。そして、敵が引いてくれれば、中田と中村は一層技巧を発揮しやすくなる。敵が引けば、中田と中村が高精度なロングボールを両翼に入れられるようになるし。

 そこで両翼。
 加地の負傷は大丈夫だろうか。ジーコ氏も試合後に憤慨していたようだが、大会前の準備試合であのようなラフタックルをしてくるとは、ドイツも地に落ちたものだ。
 ところが、代わりに登場した駒野がまたよかった。後半開始早々に、いかにも駒野らしい縦突破を見せた以降本人もリズムを掴んだのだろう。上記の2点目の高原へのアシストも、周囲がよく見えているが故のものだった。 
 こうなると残るはアレックス。今更、守備についてどうこう言う気はないが、攻撃は不満。もちろん、中田、中村を軸にする短いパス交換によく加わり、個人技の巧みさを見せた事は評価に値する。しかし、相変わらず無理な突破を狙う悪癖が気になる。日本独特の枚数をかけた崩しの場合、あの無謀なドリブルで敵にボールを奪われると逆襲を食らうリスクが高いからだ。完全に抜け出した場面以外は、無理は禁物で、高精度なインフロントキックによるフィードを組立でどう活かすかに、専念した方がよいと思うのだが。
 ちなみに、私は玉田に対しても同じ考えを持っている。先日、コメント欄でコロンバス氏より、私の玉田に対する批判に関して「玉田に『勝負するな』と言っているようなものではないか」との反論をいただいた。その通り、私は玉田に対して、(アジアカップバーレーン戦や中国戦のように)「『ここで抜ければ得点になる』と言う場面以外は勝負するな」と言っているのだ。アレックスにしろ、玉田にしろ、あの手のドリブルは抜き損ねた場合のリスクが非常に大きいのだから。今の日本代表であのようなドリブルをする権利を持つのは、中村だけである。

 最後に大黒。あの2つの場面を決めるための君だろうが。頼むよ、本番では。 
 
 ドイツに対してサッカーの質で上回る事ができたこの試合。デッドマール・クラマー氏は、この試合をご覧になって、どのような感想をお持ちになったのだろうか。

投稿時間 2006年05月31日
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