直情的に語らせていただく。
やはり監督の責任としか言いようがない。
大熊氏は、FC東京をJ1に定着させ、(そのチーム作りや采配に多大な疑問はあったものの)前回のワールドユースでベスト8進出を果たした、評価すべき実績を上げた監督だ。しかし、今回のワールドユースのチーム作りでは、致命的な過ちを犯してしまった。
ただし、私が大熊氏を批判するのは、水野に代えて兵藤を起用したとか、事前にマスコミに120分勝負と宣言した事で終了間際選手たちが集中を欠いたのではないかとか、等の戦術的な理由からではない。
水野の交代だが、兵藤も活動量豊富な悪くない選手だ(今大会の出来は今一歩だったが)。また守備面で水野が時々1対1に負けていたのも確か。私自身は水野の交代は絶対すべきではなかったと確信しているが、延長を見据えて守備のよい選手を起用すると言う考え方もあるのかもしれない。また、終盤の兵藤の精度を欠いた(しかしミスと言うほどではない)バックパスを敗因とまで言うのは論理の飛躍だろう(失点はその後のスローインからなのだし)。
粘り強く戦い抜いてきたチームに、あの時間帯であんなに集中が切れたプレイが出てしまうとは皮肉な事だ。出来の悪い試合を辛抱強く拾い続けてきたチームが、久々に出来の良い試合をして、肝心要の時間帯のまとめでウッカリしたと言う事か。本当にサッカーと言うものは難しいスポーツだ。
私が不満なのは、チーム作りのベースとなった平山の起用法だ。誤解されては困るが、私は平山を中核にしたチーム作りを否定はしない。どのようなチームでも中心的な選手の個人能力を存分に発揮できるようにチーム作りは行われるべきだと思う。そして、平山ほどの逸材であれば、ユース代表チームを彼を中核として作っていく事自体は適切な選択の1つだと思う。
私が気に入らないのは、大熊氏が平山を「ポストプレイヤ」として評価してチーム作りをした事だ(アテネ五輪代表監督の山本氏も同じ間違いを犯した)。私は平山を「ストライカ」として評価してチーム作りをすべきだったと思っている。
平山の「ポストプレイ」を軸にチームを作ろうとするから、あそこまで不正確なロングボールが増えてしまったのだ。さらに、あれだけ頻繁に長いボールを使えば、敵DFだって予想して待っている。そうなれば、どんなにヘディングの強い選手でも、空中戦に勝つのは簡単ではない。さらに、せっかく競り勝っても適切な位置の味方のサポートがなければ、ボールはキープできずルーズボールになってしまう。さらに悪い事に、味方のサポートが薄い場合、そのサポートに来た選手からのパスを受けなければならないから、平山は敵陣から離れたところにウロウロする事になる。すると、平山は自分が最も仕事をすべき場所である敵陣から、遠いところでのプレイを継続する事になる。以前から述べている事だが、平山がタッチ沿いに開いても、中盤でボールを受けても、敵は怖くない。敵は自陣近傍の平山が怖いのだ。前回のワールドユースで活躍した平山は、この2年間山本氏と大熊氏の指示の下、敵陣から離れた場所でウロウロする事を続け、結果として思うように成長できなかったのではないかとすら思える。
平山を軸にチームを作るのであれば、いかに「平山に点を取らせるか」と言う考え方で目的志向のチーム作りが可能になったはず。例えば、両翼を深くえぐって精度の高いボールを入れるためには、誰と誰を組み合わせるのがよいのか。敵が両翼攻撃を恐れて守備を固めた場合、平山をおとりにしたクロスを入れるためには、どのようなセカンドストライカやパッサーが適切か。そのような選手同士の組み合わせを作り上げて、チーム作りをして欲しかった。
ちなみに「いかに平山に点を取らせるか」を具現化して見せたのが水野である。オランダ戦のFKは、平山の高さを気にしている敵DFに対し、平山を横に走らせてフリーにさせ点を取らせた。豪州戦、強引に左サイドをえぐり、ゴールラインと平行に高くて速いボールを蹴り、平山に合わせようとした(合せ損ねた平山の「申し訳ない」と言う表情)。モロッコ戦、右サイドで高いボールを蹴る振りをして小さなスイングで低いセンタリングを入れ、平山に足で狙わせた(反転した平山の左足シュートが枠を外れた際に、ロングショットで水野が本当に悔しそうな素振りをしたのが写ったのが印象的)。
水野はベナン戦後のインタビューで「平山が点を取らないのが問題点」と語ったと言うが、評価すべきはその強心臓ではなく、勝利のための明確な目的意識であろう。
ここまで見事なコンビネーションが、(おそらく2人の自覚と反復練習のみで)できていたのだから、続いて、平山のウラから飛び出す前田俊介と、水野に前を向いてボールを持たせるカレンの献身と梶山の正確な展開と...かように次々に発展させた組み合わせを考えていれば、同じメンバだとしても、一層素敵なチームになったのではないかと思えてならない。
大熊氏はスタートのところで間違えていたとしか思えないのだ。平山は大熊氏に難しい仕事を要求され、肝心のゴール前で力を発揮できずに終えたように思えてならないのだ。ワールドユースベスト16止まり云々よりも、選手の素質を有効活用できなかった責任は重い。平山の復調を節に祈りたい。
北京五輪に向けたチーム作りが近々始まるのだろう。私はその監督としては、ここまで述べた理由で、大熊氏は不適だと思う(そもそも五輪代表を、あまり長期的に作り上げる事も最近問題視しているのだが、それは別な機会に)。
まだ若く情熱的な大熊氏が、野に下った上での復讐戦に期待したい。
