毎シーズンオフの常であるが、選手の移籍に関する騒動が喧しい。宮本とアレックスの海外同クラブ移籍にもビックリしたし(これはこれで後日述べます)、大量の選手を解雇したマリノスからは久保の離脱も噂されている(これまた興味深い話題だが)。そんな中で、最大の注目は、阿部勇樹の去就であろう。一部の報道によると、レッズへの移籍が決定的との事だが、FC東京やグランパスも相当な好条件を出して勧誘していると言うし、祖母外氏が移ったグルノーブルからの話もあるらしく、さらに当然ながらジェフも何とか慰留してるだろうから、最終的結論はまだわからない。
阿部と言う選手は非常に面白い選手で、日本には珍しく高いレベルで汎用性の高い選手だ。展開力、長いボールの精度、身体の強さ、空中戦、守備でのしつこさ、いずれもトップレベル。基本的には守備的MFが適任だが、DFもできるし、局面によっては前でも使える選手だ。阿部にとって不運だったのは、得意とする守備的MFのポジションに、やや年上に豊富なタレントがおり、中々代表での出場機会が回ってこなかった事。それでも、一昨年のアンゴラ戦や昨年のUSA戦では、後半から起用されるや抜群の展開力でチームの流れを変えるなど、見事な存在感を見せていた。
オシム氏就任以降は、完全に代表でもレギュラに定着した阿部だが、主に最終ラインを務める事が多い。現在の日本代表で一番目立つのは闘莉王かもしれないが、まあ闘莉王はアレだから、事実上のチームリーダは今後阿部と今野が務める事になる可能性が高い(このあたりは異論も多かろうと思いますが)。
そう考えると、もし阿部が国内の他チームへの移籍するとしたら、現役バリバリの代表チームの中心選手の移籍と言う事になり、ここ最近ない戦力移動になる。これはJSL末期チーム再編時代の堀池や柱谷哲二の移籍以来の大事となるかもしれない。その事自体は、欧州南米の先進国同様、強クラブが移籍による補強を重視するようになったと解釈すればよかろうが。
では阿部はどうすべきなのだろうか。そのあたりの余計なお世話を考察するのが、今日の講釈の目的である。
まあ一言で語れば、今の阿部ならばどのクラブでも相当な活躍をするに決まっている。むしろ、問題は阿部の加入によってはじかれる選手になるのではないか。
例えばレッズ。闘莉王、坪井、啓太、長谷部と代表選手が並び、さらに小野も山田もいるこのクラブに、阿部が加わる事を考える。確かにアジアチャンピオンズリーグを戦い抜くためには、相当な選手層が必要だろう。しかし、レッズが抱えている選手は、本当の意味で日本のトッププレイヤ。これは補強と言うよりは、破綻に近い現象となるのではないか。
FC東京でも問題は同様だ。今野は別格としても、茂庭、伊野波、徳永、さらには梶山と、阿部とはスタイルが異なるがポジションがかぶりそうなタレントが多数いる。間違いなく阿部の加入は補強になろうが、チームは混乱するだろうと思う。
グランパスならば、すっきり収まりそうだ。昨年はやや冴えなかったが中村直もいるし、老獪な藤田との連携も面白そう。隠れ代表候補の杉本が阿部のロングボールで抜け出したり、ヨンセンが阿部のクロスを決めるのを見るのは愉しそうだ。ただし、それならばジェフで君臨を継続するのとそうは変わらないようにも思えるのだが。
そう考えてくると、今シーズン阿部がどこのクラブでプレイしようが、阿部にとっては変わらないような気がする。むしろ、大事な事は、早々にそのクラブで地位を確立し君臨し、代表で中核として活躍してアジアチャンピオンを目指す事だろう。つまり、悩んでいる(らしい)本人には失礼だが、今の阿部の能力ならば、(海外に出るというなら別だが)国内ならばどのクラブでも問題はなく、環境の選択は彼にとって本質的な問題ではないのではないと思う。
私の意見は、こちらのレッズサポータの方に一番近い事になる。
表現を変えれば、一番カネを積んでくれるクラブに行くべきではないか。阿部クラスの選手にとっては、オファーしてくるクラブの誠意はカネであるはず。そして、もしそのカネに差がないならば、ジェフに残留しリーグタイトルを目指すのが一番よいと思う。環境が変わらなければ、一番活躍しやすいはずなのだ。
阿部が目指すべきはアジア最高の名手なのだから。
