フランスが先制するまでの攻め合いの美しさがまずよかった。共に4−2−3−1のフォーメーション、お互いが攻勢を取ろうとして美しい攻め合いとなった。ポルトガルは、C・ロナウド、フィーゴと並ぶ両ウィングが左右にずれながらマニシェとデコの展開を受け、最後華麗なドリブルでの突破を狙う。休養十分のデコはよく動いて、スルスルとペナルティエリア直前に進出し、色々な仕掛けを見せる。一方のフランスは、さすがにジダンはブラジル戦ほどは動かず比較的トップに近いところに位置取りするが、マケレレやリベリーの粘りからよい体勢でボールを受けるや、アンリをおとりに様々な攻撃を組み立てる。
そして、両軍の守備ラインの強さ、巧さが、それらの攻撃を見事に防ぐ。フランスはテュランとギャラスの中央がとにかく強い。2年前の欧州選手権で「ここまでか」と思われたテュランは今なお素晴らしい。サニョル、アビダルの両サイドバックは、8年前の2人(テュランとリザラス)の才気や創造性には欠けるのもの、共に欧州のトップクラブで活躍するだけあり、「守備の選手に必要な要件は守備力である」と言う、ここ4年間我が代表チームでは禁句になっていた当たり前の事が当たり前に守られていた。一方のポルトガルは、メイラ(今大会、その能力の高さに改めて感心させられた、ベスト11をテュラン、カンナバーロと争う)を軸に4DFの守備力の強さが絶妙。逆サイドからの攻撃に対するサイドバックの絞りの巧さが心憎い。ポルトガルのこの2人は、それに加えてここぞと言う時に、攻撃でも見事なパフォーマンスを見せるのだから。後半、ミゲルが負傷退場する場面直前の高度な切り返しの連続はすごかったな。
この攻め合いが継続し、このまま得点の取り合いになってくれればなお美しかったが、もちろんそうはならなかった。フランスは先制以降、無理をせずに守備を固める方策を選定したからだ。まあ、中心選手のお年を考えたら、文句も言えないだろうが、ちょっと残念。
ともあれ、先制時のPK奪取の際のアンリの深い切り返しの見事な事。8年前優勝した際には、ただウィングのポジションに立っているだけでほとんど約に立たず、前回韓国では第2戦で足の裏を見せる軽率なファウルで退場になり、ワールドカップではロクな印象がなかったアンリだが、ブラジル戦の得点と言い、この日のPK奪取と言い、見事なものだ。
PKの攻防も世界最高クラスのものだった。イングランド戦で冴え渡ったGKリカルドの読み、反応は共に完璧に近かったが、ジダンのシュートはコース、強さ共に、リカルドを上回った。
その後守備を固めたフランスにポルトガルは攻めあぐむ。中央の4枚の強さは言わずもがなだが、両翼の4人も忠実によく守る。さらにヴィエラとマケレレは、結構な年齢になっているにも関わらず、両翼での2対2が苦しそうになると、必ずサポートに行く運動量を見せるのから凄い。
そして、攻めあぐみからの脱却のために、フェリペ氏とデコは実に様々な努力を見せる。まず前半終盤から、デコの位置を下げて、時にマニシェと前後を入れ替えて変化をつける。次に左ウィングにシモンを投入し、C・ロナウドをトップに置きつつ左右に動かし、両翼で3対2の数的優位を作りテュランを引き出そうとする。さらにポステガをコスティージャに代えて投入し、デコとマニシェの2ボランチによる4−2−2−2に変更し、リスク覚悟で最前線の数を増やす。最後はメイラを前線に上げてのパワープレイを行った。ミゲルの負傷交代がなければ、もう1枚どのようなカードを切っていたか想像するのは愉しい遊びだな(ヌノ・ゴメスを投入してトップを3枚にしての爆撃攻撃だろうか)。
ともあれ、テュランはフェリペ氏の努力にも関わらず、ほとんど決定機を与える事なく守り切った。
本当のラストプレイ、GKリカルドまでを前線投入したポルトガルの猛攻をしのいだフランスが中盤に押し返し試合終了を迎えると思われた瞬間、フランス中盤のわずかなミスをマニシェ?が奪い、最前線のメイラへ。メイラは見事なスクリーンプレイの後、最前線のC・ロナウドへ絶妙なスルーパスを出すが、オフサイド。この場面、C・ロナウドの戻りが遅れてしまった訳だが、ある意味でこの日の試合を代表するような場面だった。猛攻を跳ね返し、もう時間がないにも関わらず「万が一」を想定してラインを忠実に押し上げたテュラン。一方、「万が一」を想定する事なく、あきらめてしまって忠実に戻らなかったC・ロナウド。イングランド戦で、最後のPKを決めた時の精神力は、正に次代の「スーパースター候補」を見せ付けるものだったが、この場面はまだ「候補」である事を示してしまうものだった。この「最後の失敗場面」を忘れる事なく、世界への君臨を目指して欲しい選手だ。
警告もほとんどなく、共にフェアで知的で技巧的だった両国。極めてレベルの高い、正にワールドカップの準決勝と評されるすばらしい名勝負、長く語り継がれる試合となるだろう。
