80年代半ばだったろうか、友人達と議論した事がある。
「一体日本代表が欧州で戦ったらどのくらいのランクになるのだろうか」
色々議論は出るのだが
「いつもワールドカップや欧州選手権の各グループで最下位の、マルタとかキプロスとかルクセンブルクには勝てるのではないだろうか」
と言うあたりに落ち着いた。
もっとも、こう言った国でもホームでは結構粘り強い試合をするのが常。ちょっと古い資料で調べてみたら、80年の欧州選手権の予選でマルタはホームのバレッタに当時の西ドイツを迎え、0−0の引き分けに持ち込む事に成功している。当時の西ドイツは、今日と異なり欧州屈指の強豪、結局80年にイタリアで行われた本大会ではルムメンニゲとシュスタを中心に優勝しているほどのレベルだった。その西ドイツと引き分けたのだから、半端ではない。大体、当時の日本代表が国立に西ドイツを迎えて引き分けられるとはとてもではないが思えないな。
今回の予選でもクロアチアがマルタに引き分けているが、小国とは言え欧州で揉まれている経験に加え、肉体的には頑健な選手が多い事もあり、そう簡単に大量点を取る事ができる相手とは考えない方がよいようだ。
そう考えると、この日の苦戦は残念だったが、そう悲観的に考えるものではないと思う。
マルタは相当モチベーションをもって試合に臨んでくれた事もあり、タックルもいささかラフ。先日の加地の負傷の影響もあったかもしれないが、選手達だってこの時点での負傷を恐れ、あまり無理なプレイは選択していなかった。
また2トップは代えてきたものの、後の選手はドイツ戦からあまり日が経っていないための疲労もあったろう。ピークを8日後にもっていかなければならない事情もあるし。
豪州戦には、ドイツ戦以上に引き締まった素晴らしい試合を見せてくれる事を確信している。
ただし後半の攻めあぐみは少々複雑な気分になった。
中田、小野、中村、小笠原の4人が同時にピッチに立った時は少なからず興奮した。この4人が揃ってプレイした事はかつてなかったはず。我らが世界に誇り得る、中盤の創造的名手が勢ぞろいしたのだから。個人的には、この4人が技巧を凝らしたプレイで遅攻で敵陣を次々と崩す場面(たとえば、プラティニとジレスとティガナとジャンジニのように)を期待したのだが、現実はそう甘くはなかったと言う事だろう。
少なくともこの試合に限っては、両翼、最前線との約束事が曖昧だったのみならず、4人の作業分担も不明確。何か、4人がお互いに遠慮しあってプレイしたかのようにも見えた。
もっと早くこの組合せを試して欲しかったのだが(もっとも、小野と中田が交互に負傷して離脱していた事と、インタナショナルマッチデー以外は欧州でプレイする選手の召集が難しかった事などから、やむを得ない事も確かだったのだが)、もう時間はない。
僅かながらの期待ではあるが、願わくば、大会までの短い期間で相互の連携が深まる事を。そして、短い時間帯でもよいから、どうしても点が取りたい苦しい場面だけでも、彼らが同時にプレイし、世界中を驚かすような技巧の冴えを見せてくれないだろうか。
と、夢を追っている時間は過ぎたのだろう。
今大会は、ドイツ戦のスタメンを中軸に戦い抜くことになるのは間違いない。それはそれでよい。残り僅かな準備期間を有効に活かし、丹念に勝ち点を積上げ、まずは2次トーナメントを目指そう。そして、さらに上位を。
ただ、このマルタ戦は、この4人が同時にプレイした試合として、大事に記憶していきたい。
