悔しいけれど、まあ仕方がないのだろうな。準々決勝では後半終了間際に美しい得点で突き放して、ワールドユース出場権獲得。準決勝では、幾多の戦術ミスはさておき、人数が1人少ない中で、ほとんどサンドバック状態になりながら守り抜き、宿敵とのPK戦を勝ち抜き。と、ここまで美しいドラマを描いてきて、これでアジアチャンピオンになっては、何か申し訳ない。と言うより、勝とうが負けようが、これだけ厳しい試合を経験できたのだし、「復讐心」と言う得難い経験を積む事ができたのだから、よいアジアユースだったのではないか。繰り返すが、ワールドユース出場権と、ライバル韓国への勝利を刻む事ができたのだから。
さらに言えば、このチームは北朝鮮とやるのは3回目。選手達は3回目で負けた事をよほど悔しがっているようだが(とてもよい事だ)、醒めた視点から言えば、このチームの第一目標「ワールドユース出場」のためには、この決勝戦よりも、熊本の1次予選、先日の1次リーグ初戦の方が、よほど重要だった。重要だった試合は、キッチリと勝ったのだから、何ら問題はなかったのだ。
でも悔しいね。
一方で、北朝鮮のガンバリにもビックリ。考えてみれば、上記のように要となる試合でことごとく日本に負けながら、よくもまあゾンビのように生き返ってきたものだ。前半、ガツガツ来て日本が苦しむのはある程度予測していたが、120分間ガンバリきったのには驚いた。後半、ようやく日本が落ち着いてボールをキープできるようになり、柏木と梅崎を軸に幾度となく好機を掴むが、守り切られてしまった。さらに前線の選手の脚力が落ちず120分間走り切り、幾度となくカウンタから好機を掴んのだから恐れ入る。40年前ミドルスプラでアズーリがやられた時も、このような脚力にやられたのだろうか。
以前より語ってきたが、東アジアで日本と韓国が突出している事は、日本にとっては決して望ましい事ではない。したがって、北朝鮮が強いチームを作ってきた事は歓迎すべき事態であろう。少なくとも、優秀な選手を並べながらも志の低いサッカーしかできないサウジアラビアや、敵の足を蹴ってはいけないと言うルールが定着していない中国よりは、格段に魅力的なサッカーだった。もちろん、脚力に頼るサッカーには限界もあろうが、1人1人の選手の技術もそれなりに高いものがあったので、将来テンポを落とせる選手が登場する可能性もあるだろう。また、安英学、李漢宰、梁勇基(あるいは彼らに続くタレント)と言った日本育ちの選手が、有効なアクセントになるかもしれない。
監督の吉田氏だが、中々の現実主義者のようだ。「大人の」采配で、「選手に経験を積ませ」ながら「負けない事を狙った」ように思えた。
ハーフナーと伊藤と言う今大会出場機会は少なかったが「素質」に期待できそうな選手を起用した事だ。考えてみれば、今大会の6試合中、初戦北朝鮮、タジキスタン、サウジアラビア、韓国の4試合は「必勝」体制で臨み、イラン戦と決勝は「経験」も考えたように思えた。もちろん、フレッシュな選手を起用したと考える事もできるが、森島がそれほど消耗していたようには見えなかったし、青木は過去2試合フル出場していた訳でもない。むしろ、定石としては、アトム、森重に代えて香川や柳沢を入れて、柏木の守備負担を減らすべきだったのではないか。
また3人目の交代を我慢したのは、「勝つ事」よりも「負けない事」を狙い、終盤の負傷に備えたのだろう。GK林に対する信頼感から、PK戦に持ち込まれても勝つ可能性が高いと考えたのかもしれない。ある意味でこの策は的中し、終盤も終盤で森重の足がつった時に、柳沢を投入する事で、守備のやらずもがなの崩壊を防ぐ事ができた。けれども、戦闘能力の優位さを考えたら、3枚目を積極的に使い「勝ち」を狙って欲しかったのだが。
しかし、吉田氏は現実的な選択肢を選んだと言う事だろう。誰よりも吉田氏も決勝で勝てなかった悔しさを感じているだろうが、彼のより本質的な仕事は、優秀な素材を成長させる事とワールドユースでの好成績なのだから、そのような選択も正しい。是非、吉田氏には、小野の時よりもよい成績を収めてもらいたい。
それにしても柏木の成長には恐れ入った。あの同点弾の場面、柏木が加速して敵DFに向かっていった瞬間に、思わずTV桟敷で「勝負しろ、お前なら2人くらい抜けるだろう!」と叫んだら、その通りになり、坊主の尊敬を獲得する事ができた(笑)。独特のリズムのドリブル、振りの速いスルーパス、精度のあるヒールパス。今大会梅崎も決して悪くなかったのだが、少なくとも今大会は柏木の大会だったな。すっかり風格がついた柏木が、サンフレッチェに帰り、寿人にビシビシとラストパスを通すのを愉しみにしよう。おー、そうだ、反町さん。来週の国立には、柏木を呼びましょうよ。
ここまで、複数回に渡りアジアユースについて講釈を垂れてきた。しかし、ある意味で最も重要な話題2点に、にまだ到達できていない。7回連続出場そのものが大変な偉業である点、そして内田の召集問題(柳川の帰国問題を含む)である。この2点については、相互の関連を含め、後日述べたいと思う。
