中澤は、昨年ワールドカップで敗退後、オシム氏が代表監督に就任した早々に「代表辞退を意思表示した」と報じられ、実際そのままオシム氏の選考から外れていた。
05年は圧倒的な守備能力を発揮し文句無く代表の中核として機能していた中澤。ところが、肝心のワールドカップの年の昨06年に入ると、序盤から明らかに体調維持に苦しみ極度の不振に陥ってしまった。それでも6月のワールドカップには、何とか体調を整えて見事ななプレイを見せてくれた。あのブラジル戦の前半の失点、ロナウドを見失ってしまった中澤だが、それはそれでワールドカップ本大会で史上最高の9番にあそこまでの高度な動きをさせる事になった事は、中澤の能力の高さの現れでもあったのだ。
その直後の「代表辞退」表明。当時私は「積み重なった疲労を考慮すれば、無理もないのかな」と考えた。そして、中澤は疲労を回復させた後、とうとう帰ってきてくれた。まだ齢28歳、老け込むには早過ぎる。あのロナウドにやられた痛恨の経験を、必ずや南アフリカに向けて発揮してくれるはずだ。
ともあれ、今回の中澤の招集は、現在の代表チームにとんでもない緊張感を提供する事になる。現在の代表チームのセンタバック、ボランチのレギュラ格の選手は、闘莉王、坪井、阿部、今野、啓太、皆代表でもJでもよいプレイを見せており、やや固定化された感もあった。しかし、中澤がチームに加わった今、彼らのいずれもが、ポジション確定とは言い難い雰囲気になってしまった。闘莉王は高さ、強さ、強引な攻撃参加など多数長所があるが、中澤は高さ強さについては遜色なし、闘莉王ほど下品な攻撃参加はないがセットプレイでの得点力は抜群だし、何より豊富な経験を誇る。もちろん、この2人は並んでもプレイできるだろうが、阿部の展開力と射程の長さ、今野の広範な運動量と攻め上がり、坪井の俊足を活かした粘り強い守備を考えた時に、闘莉王とてポジションが安泰では無い事は間違いない。さらに、守備ラインから阿部なり今野がはみ出た場合、当然彼らを中盤に起用する発想が出てくるから、啓太とてポジション確実ではなくなってしまっている。さらには、阿部や今野はサイドプレイヤとしての起用も考えられようから(阿部はないかな?)、加地や駒野はの刺激まで準備されている。
もちろん、欧州では中田と稲本が虎視眈々と復帰を狙っているのだし。一方、今回は召集対象外となった五輪組(でも何故林だけは選ばれたのだろうか)の水本と青山にしてみても、A代表のレギュラを獲得するまでに、己がいかに能力を高めなければならないかが、「中澤の選考」1つで一層明確になったはずだ。
やはり、爺さんは凄いと思う。
代表チームの守備ラインと言うのは、攻撃ラインと異なり、どうしてもある程度の固定が必要となりがちなもの。しかし、固定されるまでには健全な競争があるべきで、そのような競争の中から、落合弘、加藤久、堀池巧、そして井原正巳らは抜きん出た存在となり(中澤もこのランクに並べてよいだろう)、長期に渡り「彼だけは間違いなく代表のレギュラだ」と語られる選手に成長していったのだ。
健全な競争の復活を素直に喜ぶものである。
